おもちゃ34
コールマン GIストーブ
Coleman M-1950 (No.536)
なんだかんだで、ずいぶん引っ張っているバーナーのお話ですが、
そもそも私がバーナーに惹かれたのは、もうずいぶん前の山岳部時代の頃。
本来屋外でうろつくのが好きな子供だったのが、
山岳部に入ってから、一層それに拍車がかかり可能な限りの山をうろつき、
そしてたまにはその場所で一夜を明かすことも多くなりました。
でもそういう時の夜って、やはり寂しく心細い気持ちが湧き上がるって来るのですよ。
そんな時、そういう情けない気持ちを一気に吹き飛ばしてくれるものが、
静かな闇の中、「シュボボボ・ボボボ…」と元気な音をだし、勢いよく炎を上げるバーナーだったのです。
無論その時は高校生ですから、バーナーは高価で手の出ないものだったので、
クラブの備品であるバーナー(ホエーブス625)を、その都度かりて出て行っておりました。
だからいつかは自分のバーナーが欲しいと、常々思っていたのです。
この思いは同じクラブにいた同期の者たちも同じだったようで、
卒業後それぞれバイトをしたお金で自分専用のバーナーを買いました。
それが面白いことに、それぞれが選んだバーナーにも各自の個性が出ており、
私は性能よりは、携帯性、機能性、そして何よりかわいらしさから、「
オプティマス8R
」を。
まじめで、合理的な考え方の
やっさん
は、
華は無く、重くかさばり手軽ではないけど、頑丈で信頼性が高く、質実剛健の「
ホエーブス
」。
そして、何もかもが規格外で、常に我々の想像の遙か斜め上を行っていた
ピエール君
というのがいまして。
何がどう規格外かと言いますと、実は以前軽くお話させていただいております。
「自衛隊レーダー破壊容疑事件」
「仙人入門&狼になるんだ事件」
「ミミズの正座&血染めのマット、そして死体…」
その彼が選んだのが、
今回ご紹介するコールマン社のM-1950 (No.536)。
通称GIストーブです。
これはその名の通りアメリカ軍が使用していたもので、
朝鮮戦争の際、戦地でも使用可能な、頑丈でシンプルなバーナーをということで、
国内各社に規格を統一の上製造を依頼し納入させたものです。
(アルミ製のケースが、このようにお鍋として即使用できるようになって炒る点もさすが軍用。)
ですのその特徴としては、携帯に便利なコンパクトさと、ラフに扱っても壊れない頑丈さ。
またこわれても、素人が修理可能なほどにシンプルな構造。
またその修理のための工具や、交換パーツも本体に付属しているのも特徴の一つ。
左右の矢印部分をそれぞれ外してみると…
このように予備パーツ()バルブと工具になっております。
取り外し、取り付けとも素手でワンタッチ。
ですが固定後はそう簡単に外れない造りはさすが!
また、いざとなれば自動車用のガソリンも使用できる柔軟さモ持ち合わせておるのです。
とまあ、こう書くといいことづくめのようですが、
当然そのしわ寄せは、使い勝手に出てきます。
コンパクトないボディは、細身で安定感がなく、油断するとすぐコケます。
頑丈でシンプルですが、油断するとすぐゆるんで、ガソリンをお漏らしします。
そして、なにより点火の際には事前に、点火しやすいようにボディを加熱し温めるプレヒート塔作業を行う必要があるのですが、
その際吹き上げる炎ときたらば…
「これは焚火か?!」
とそう思うほどに盛大な炎をぶち上げるので、テントの中で火をつけようものなら、
ほぼ確実にテントが燃えてしまいます。
これぞ、まさにキャンプファイヤ〜!
(=^^=)ゞ
そしてまた、点火後も特徴的で、
「弱火?とろ火?火力調整ぇ…? なにそれ?おいしいの?」
といった感じで火力の調整などほとんどききません。
まさに、常に全開か、もしくは消えるかの
「アール オァ・ナッシング!」
なんとまあ、
漢
(おとこ)な奴!
またこの本体付属の火力レバーが小さく扱いにくいうえ、
火力でめちゃくちゃ熱くなり、下手したら自分の熱で溶けて来るから始末が悪い!
なんというか、一旦走りだしたら、自滅するのもいとわず突き進む!
やはり、
漢
!
(というか、ややM気味のおばかさん?)
でも、そういう部分を差っ引いても、
というか、なぜかそういう部分がマイナスに感じないほどに魅力的なんですよね。
こういう部分が本当に持ち主のピエール君とダブって見えて、
「犬は飼い主に似るとは言うけど、道具もそうなのかな…」とよく思いました。
そういう思い入れのあるバーナーなわけですが、
つい最近、ひょんなことで私の手元に来ることに!
こりゃ嬉しい♪
そういうわけで、今回30年ぶりに対面し、いざ使用してみると…
うんうん、プレヒート時の炎は相変らずやね♪
でも、案外すぐ落ち着くな…
お!
もうお湯沸いた?!
と、
「あれ?こいつってこんなに使いやすかった?」
と思ってしまいまいました。
以前感じた使い勝手の悪さは、今はもうそんなに感じません。
そういや、くだんのピエール君も、今では立派な大人になって、
かっての行いなどなかったかのような紳士然としております。
道具も人と同じように時とともに変わるのかな〜?
【追記】
実はこの後しまうために圧を抜こうと燃料キャップを緩めようとしたら…
「あれ?燃料漏れ?」
そこでポンプを軽く押してみると、今度は結構な勢いで燃料がポンプから逆流!
あ〜、これ
あの時
と同じ症状やん!
というわけでさっそく補修パーツを入手して部品交換。
とは言ったもののいきなり問題発生!
このキャップ部分どうやって分解すんだ?
手に取ってあれこれ試してみたけどさっぱりわからない!
でも今はネットという強い味方がいる!
そこで分解図を見てみると、どうも矢印の筋部分でねじ込まれており、そこで左右に分割されている様子。
私のはここが思いきりねじ込まれ一体化していたのでまったく気付かなかった!
とはいうものの…
これどうやって外そう?
力技に頼り傷つけるのも嫌なので、結局ヒートガンでキンキンに熱した後、
片方を万力でくわえ、もう片方の周りに皮を巻きそこをプライヤーでくわえてひねりました。
というわけで無事分解!ヽ(^∀^)ノ
➀のゴムパッキンが劣化しガチガチに硬くなっていたので役目を果たさず逆流の原因に。
➁のキャップのパッキンも同様に劣化していて役立たず。
ですのでこれらには、油を塗った新品部品に交換し、
ついでに、Bの皮製のポンプカップも乾ききっており、正常に機能していないようだったので、新品に交換。
新品だけど、一応念のため装着前にも油を塗り塗り♪
こうして再度組み上げると、燃料漏れ、圧漏れが無くなったのはもちろんのこと、
作動時の手ごたえがすごくかっちりし、全く別物!
やはり、ちゃんと手入れすれば、いつでも昔の性能を取り戻すものだな〜。
こういうのは道具だけでなく、人も多分そうでしょうね♪
【追記の追記】
とまあこういうことをしていたのですが、
この作業の時に調べごとをしていたときに、ふと気になる一文を目にしました。
「この機種のポンプには、予備部品が多数内蔵されている。」
え?ポンプの中に?!
え??
そこで再度ポンプをばらしいじくっていると。
なんと押し手のノブのところとロッド(軸)がまたもやネジで分割できることに気づき、
早速そこを外してロッドの中をのぞいてみると…
「あ!なんか入ってる!」
ちょうどパイプ状になったロッド内部には、何やらぎっしり部品が入っており、
それを慎重に取り出すと…
でるわ!でるわ!
うわっ!
まあ、よくもこれだけたくさんの部品を詰め込んだものだ!
これって、消耗部品どころかほとんどの予備部品がそろってるやん!
ちなみに、内蔵していた部品は次の通り。
a スクリーンジェネレター
b チューブジェネレター
c 燃料キャップパッキン
d ポンプキャップ
e バルブステム・パッキン
f エアチェック・ポンプ・ガスケット
g エアチェック・ポンプ・ガスケット・シート
h エアチェック・ポンプ・スプリング
(「i」のエアチェックバルブは予備パーツではありません。うっか記号うっちゃった!(=^^=)ゞ)
ということは、大抵の修理はこれだけでこなせるぞ!
なるほど…
さすが軍用!
しかしまあ、ずいぶん昔から見ていたのに今の今までまったく気が付かなかった!
というか、気づけなかった!
長い付き合いでもこうして結構見落としている部分てあるもんだな〜。
なんか、昔からの友人の意外な一面というか、秘めたる才能を垣間見たような驚き!
こういう面も、なんだか人間っぽいバーナーだな〜。
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