おもちゃ43


〜オプティマス 45〜

 
ある日家に届いた古い真鍮製品。

さてこれは何でしょう?

見ようによっては仏具に見えんこともないですが…?

実はこれ、昔々のバーナーで燃料はなんと灯油!
私が学生の時代に話に聞いたことはありましたが、
「え?灯油のバーナー?!」
と当時でも、ちょっとびっくりだったのです。

明治期に生まれたこの形式は、長く携帯式コンロの代表的な形で、
その後、取り扱いの簡便さから、次第にガソリン式、ガス式のものに取って代わられ、
今では、ほんの数機種が存在するのみ。

ちなみに今回届いたこのバーナーは、その中で名機と誉れ高い「オプティマス 45」

でも、実は戦前に生まれたこのバーナーも、意外に結構長く生産され続け、
最終的にはなんと1996年(平成8年)まで生産され続けていたのだとか。

実はこれ先日オークションで見かけ、
「部品欠損、作動保証なし」のジャンク扱いで出ていたのですが、
その価格の安さ(2000円ちょっと♪)からついポチっと落としてしまったのです。

で、手元に来たら来たでそれはすごく嬉しいから、早速あちこちいじくりまわし、
取りあえず燃焼させるには部品は足りているし、加圧もでき、タンクからの漏れもなさそうなので、
ぶっつけ本番燃やしてみるととに!
(でも意外な場所から漏れていて火だるまになっても恐いので、安全な場所で、消火の準備をちゃんとして。)

すると…


おやまあ!

意外にあっさり火がつき、少々拍子抜け。
しかも特に致命的な漏れはなさそう。
本当なら、「良かった良かった」と、思うべきところなのに、
不覚にもこの時の正直な感想は、「な〜んだ…」。

そうか、私は自分でも気づかなかったけど、本当はこれをいじくり倒して直してみたかったんだ!
と、そう思っていると…

ん?

でも火の勢いがあまり強くならないし、気を抜くと弱火になるな…
ん〜?これは圧漏れ〜♪
いや〜、仕方がないな〜、こうなりゃばらして修理せねば!

ウケケ♪

というわけで、昨日は一日雨でお出かけの予定も無くなったから、さっそく作業にかかってました。


まず、一番疑わしいのはここ!
タンク内部に空気を送り込むポンプの部分。
この手のバーナーの仕組みはシンプルで、バーナートップ(てっぺんの火を噴くところ)を加熱して、
そこに、燃料を空気で圧送し、燃焼させる仕組みです。
そのための空気をここから入れるのですが、入れれるということは、反対に出ていきやすいということで、
大体の圧力の抜けがこの部分に不調があることが多いです。

というわけで、先ずはポンプを引き抜きます。

ん?やけに灯油臭いぞ?

で引き抜けば。

先っちょが灯油まみれ!
(このポンプはOリングタイプなんで、どうもこれは最終年式のようです。)
つまり、先端の逆止弁が不調で、そこから圧が抜け、燃料である灯油が吹き返しているということ。
ということは、この穴ぼこの奥にある逆止弁を取り出さねば!

そこで穴ぼこをのぞいてみると…

げげ!
かなり奥まった場所にややこしい形のものがある。
これは専用工具が無いと取れないぞ。
でも、そんなの持っていないし…

じゃ、作るか?

というわけで、幸い12サイズのソケットが穴にピッタリだったので、
その先端に綿を詰め、その上にアルミホイルを張り付け、内部にそっと押入れ相手の型を取りました。
そしてその後はその型を基に、ボルトを削り、ちょん切り…


できた!
これでうまくいってくれよ!

で、これをはめ込み、グリグリ回すと、

取れた!

さ、取れたら即分解だ!

空気の流れは右から左で、入り口から入る空気はばねを押し内部にはいるが、
反対はゴムパッキン(矢印)の働きで出て行かないようになっています。
で、今回はこのゴムパッキンがカッチカチに硬化していて役に立っていなかった様子。
ま、最終年式とはいえ、既に20年近く昔だからね〜。

そこで手持ちの耐燃料ゴムで代わりのパッキンをこしらえ、清掃後組み付け。

さてこれでうまく燃えるかな?

うんうんうん!
火の勢いが全く違う!

でも欲を言うと、矢印の方向がどうも弱い火を噴いているような気が…

こういう場合は火の出口、燃料の吹き出し口に原因が有るな。

よ〜し、ここまで来たらそこもチェックだ!


吹き出し口は、「ニップル」と呼ばれる矢印の部分。
でもペンチでつかもうにも、まるで檻の中にあるような感じでまったく工具が入らない!

でも心配無用!

なぜか持ってた専用工具♪

以前、いつかいるかな?そう思い買っていたのでした。
(=^^=)ゞ

で無事取り出せたニップルを薬剤に付け込み、その後丁寧にブラシをかけて掃除します。

この中央の小さな穴から燃料が吹き出す際、細かな霧状になるため、
煤を出すことなく完全燃焼させることができるのです。

言い換えればここがバーナーの命!
真鍮製の細かい部品なので、薬剤に付け込んだのち、
穴内部を中心に、傷つけないように丁寧にブラシで磨きました。

そしてリベンジ!


うんうん、先ほどにもまして力強い炎だ!
で、横っちょはどうかな〜?


ん〜。

どうかな?

やっぱ少し出るか…

でもまあ、これは実用可能な許容範囲。
今度これを持ち出してお茶沸かそう♪
どこに連れて行こうかな〜?


そうそう、このバーナーは真鍮製なので磨けばかなりきれいに輝きを取り戻すので、
当初はそうする気満々であったのですが、
こうしていじっているうちに、なんだかこの汚れもこの子の顔のような気がしてきたので、
今しばらくは磨かずにこのままの状態で使いたいなと考えが変わってきてしまいました。
なんか、我ながら不思議…

【おまけ】

最後に動画も撮ってみたので、火の勢いを比べてみると。
(太文字クリックで動画へ飛びます)

メンテ前

ポンプメンテ後

ニップルメンテ後

うん、やっぱ火力が段違い!
一目瞭然とはこのことですね♪


【おまけのおまけ】

最初このバーナーには、見慣れた火力調整レバーがどこにもなかったんで、
いったいどうやって調整するのだろう?
というか、そもそもどうやって使うのだろうと疑問に思っておりました。
で、とりあえずあちこちいじってみることに。




取りあえず燃料を入れて、ポンピング(a)すると…
おや!いきなりトップ(b)から灯油を吹き出す!
そこで、あわてて圧を抜こうと給油キャップ(c)を見ると、キャップの上に何やら小さなノブ(d)が。
そこでそれをひねると…
燃料は吹き出さず、空気だけが抜け出てきます。

なるほどなるほど、理解した!
つまり、火力調整は、タンク内の内圧で調整するのだな♪

つまりこういう手順

@eの受け皿にアルコールなどを垂らし、火を点け予熱する。
Aやがて加熱され温められたタンク内の空気が膨張し、灯油がちろちろ出てきてそれが燃え始める。
Bそのタイミングでポンピングし圧をかけると、灯油が勢いよく吹き出し強い炎に変化する。
C火を弱めたり消火の時はcのノブを緩め空気を抜き調整。

ま、みなさんにはほとんど関係ないでしょうが、
もし今後、ひょんなことでこう言う灯油バーナーを手にした際は、
この操作方法を思い出して、使ってみてください。

(*^人^*)





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