犬121♪


らんちゃんからの贈り物【中編】♪


テレビを見ながら、年越しの鐘を聞きます。

日付が変わった瞬間、欄を確認し、ほっとと胸をなでおろしました。

こうして、何とか無事に年を越し、みんなそろって新年を迎えることができました。



でも、元旦も病院通いは続きます。

病院までの距離は1.2キロ、車で行くには近すぎるし、かといって自転車ではらんの体に負担がかかりすぎる。

そういうわけで、毛布に包み抱っこをしたまま奥さんと二人テクテクと歩いてゆくのが常でした。

ゆっくり歩くと、見過ごしていた景色が目に入るもので、

このときもきれいに咲き乱れるサザンカに出会えました。



このとき先生に食事のことで相談すると、医療用の流動食(胃に直接流し込むタイプ)を分けてくださいました。

するとそれはやはり消化が良いのか、嘔吐しなくなり心なしか元気が出てきたように見えてきました。



1月3日はこちらはお日様が出て、良い天気でした。

私と奥さんにはある思いがありました。

春が来て、暖かくなったらランをつれて公園へ行こう、そして花の匂い、草の感触を楽しませてあげよう。

そう思い、願っておりました。

ですがこの時点で、実のところ私はそれが夢かもしれないと思い始めておりましたので、

天気の良いのをきっかけに、思い切ってつれてゆきたかった公園までらんを連れて行きました。


通院以外では久々の屋外で最初はやや戸惑っていた様子ですが、



やがて、吹いてくる風の匂いに鼻をヒクつかせ始めたので、

思い切って地面に立たせてみました。

実はもうこの頃は、立つことすらおぼつかなくなり、おしっこのときも支えていないと崩れ落ちるような状態になっていたのです。

にもかかわらず、しばし立ち尽くした後、ゆっくりと、ゆっくりと足を進め、

見ているこちらが、「もうやめとき。」というほど歩いたのです。




すると、この日を境に急に元気が出てきて、家でもしきりに立ち上がってはウロウロするようになってきました。

しかも、ご飯は嫌がりながらも力強く飲み下し、5日にはついに10日ぶりの待望のうんちをしました♪

ヽ(^∀^)ノ


こうしてこの年のお正月は家にずっといて犬たちと過ごしていたために、

初めて、どこにも行かずじっとしているお正月となりました。

ですが、それは退屈なものではなく、むしろ
暖かく、緩やかで、そしてとても平穏な時間でした

「こういう過ごし方もあるよっ。」て、らんに教えてもらいましたよ。



さて、お正月も終わり、元気になってきたので、血液検査をしてみたところ。

わずか20日ほどの間に白血球が4倍にも増えているではありませんか!

そのほかにもはなはだしい数値の異常が数点。

もしかすると、体内に何かあって炎症を引き起こしているのが原因かもしれない!?

エコーでは異常は見られませんが、レントゲンではやや気になる箇所が二箇所。

そこで、先生は二つの選択をわれわれに提示されました。

ひとつは、試験切開をし悪いところがあるかどうか調べる。

もうひとつは、このまま現状どおり。

私はこう考えました。

もし、原因があるのならば、取り除けば回復の望みは大きい。

しかし、何もなければ、手術で体力を奪うだけ。

だが、万が一原因があれば、それを放置しておくと悪化するだけで、

そのときにはもう手術に耐えれる体力はおそらく残っていない。

「手術してください。」


(このあたりの葛藤と悩みは、また改めてさせていただきます。)


結果は、異常なしでした。

気にしていた箇所には異常もなく、嘔吐や便で気になっていた消化器官もきれいなものであったそうです。

それを聞き私は、ほっとしたような、辛くなったような複雑な心境でした。

先生も同じような心境であったようで、

「異常がなしだったので手術料金はいただけません。」

とそうおっしゃって、お金を受け取りになってくださいませんでした。

ですが考えようです。

はっきり異常なしが確認できたんだから、後はガンガン食べてもらって回復してゆけば、

またあの元気ならんちゃんに戻れるんだ!

そういう希望が出てくるではないですか!


それを証明するかのように、手術の翌々日のこと、

休日で家にいた私が、残り物のつみれで雑煮を作っていたときのこと。

本当に久しぶりに、なんと16日ぶりに、らんがそのつみれをねだり、きれいに平らげたのです!

なんと嬉しかったことか!

(嬉しすぎて、速攻でこういうものをつくり掲示板とブログにアップしてしまいました。)

本来は人間用に調味してあるので、犬に与えるのはだめなのですが、

このときばかりは再度作って与えました。

でも、急に胃に入れるのはよくなかろうと、さらに欲しがるらんに、

「またあとで食べような。」

とそういいました。

そのあと、5日ぶりにうんちが出て、やれやれ一安心♪


ですが、その後体調が急変。

夜以降嘔吐を繰り返し、食べさせても3時間後にはもどします。

自分でごはん入れを覗きに行きますが、何を入れても口にしません。

そして、どんどんしんどそうになって来ました。

奥さんが抱っこをしているときが唯一平穏そうなので、

これから先はほとんどの時間を奥さんの腕の中、ひざの上で過ごすことになりました。

その時は、寝ながら尻尾を振っていたりしてくれていました。


13日の朝、いつものように診察と点滴を終え病院を後にするとき、

何か不気味な不安を感じ、今までは口にしたくなかった話題で先生と短い会話を交わしました。

その夜、ふらふらになりながらも立ち上がり自分でおトイレに行くその姿が辛くて、

少しでも足元が安定するようにと、コルクのシートを敷き詰めました。

そして、その夜は何度も嘔吐を繰り返し、そのたびのお漏らしをしてしまいました。

そのあとのことはブログの方に詳しく書いてあります。


明け方の午前5時、もがくらんに気づき姿勢をずらしてやろうとみてみると、四肢が痙攣しています。

慌てて奥さんが抱え込み声をかけると、徐々に弛緩し表情も穏やかになってゆきました。

体をさすり、顔を抱え込み、額をつけるようにして声をかけました。

すると、白熱灯の光を受けらんの被毛が美しく輝きだしました。

今まで気づかなかったのですが、らんの被毛は黄金色だったのです。

しかも、太陽のフレアのように、美しく大きくうねっています。

その黄金色の炎中から、真っ黒の美しい瞳がこちらをじっと見つめています。

辛い治療と、いやな食事、そして体のしんどさにずっと耐えながらも、

頑張って、頑張って、ずっと頑張って、私たちのそばにいてくれているらん。


我慢して、我慢して、

我慢して、我慢して、

我慢して輝いた金色のフレア

つぶらな黒点で私たちを追うあなたは、

まさに太陽

今はもう我慢しなくていいから、

輝かなくてもいいから、

ゆっくり休んで待っていておくれ

必ずそこへ会いに行くから。



そのあとは、ときおり尻尾を大きく揺らせたり、鼻を鳴らしたりもしましたが、

痙攣は定期的にらんを遅い、最後の痙攣は午前9時12分に起こりました。




大好きなものに囲まれて穏やかに寝ています。

春の花をかげなかったらんのために、ベランダの金魚草を添えました。



虹の橋 そこまで供せよ 金魚草


【後編に続く】



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