犬107♪

悲しむために犬を飼うのか?



前回、前々回と老犬を引き取るお話を続けてきましたが、
 
実はそのやり取りの中で、先方との間でこういう風なやり取りがあったのです。
 
 
「もっと若くて元気な仔犬がいますが、本当にそのこでよろしいのですか?」
 
 
先方の問いかけももっともな話です。
 
どこの家庭だって、愛犬を選ぶ際は元気で若い愛犬を求めますし、
 
その方が長い間一緒に楽しく暮らせるはずです。

だから、見方によっては、老犬をわざわざ引き取るということは、
 
情が移った頃に別れねばならない現実を考えると、悲しむためだけに引き取っているように映るかもしれません。


しかし、そうではないとはっきり言えます。
 
愛犬とともに暮らす喜び。
 
それは無論、仔犬の時から一緒に暮らし、数年の時を経て思い出を積み重ねる幸せ。
 
ですが、これは考え方によっては飼い主からの一方的な受け取るだけの幸せのような気もします。
 
当然それを否定するつもりはありませんが、
 
もう一つの方向の幸せもあるのだと私は言いたいのです。
 
 
今まで不遇で歳をとってきた子、そのこの残り少ない時間を幸せに過ごさせてやることができれば、
 
そのこにとって、辛かった年月を補ってやれるほどの満足を与えてやれたら…
 
きっと、それは時間的には短くとも、そのこにはとても大きな時間になると思います。
 
そして、そういう時間を与えることができるということが、こちらにもすごく大きな幸せになりうるのです。
 
そう、与える幸せとでも言いましょうか…
 
 
私自身は、子供の頃は自分のための楽しみが、「楽しみ」でした。
 
しかし、成長するにつれ、祖父母の喜ぶ顔が「楽しみ」になったり、
 
奥さんや、子供の「楽しみ」が自分の楽しみになったりと変わってきました。
 
 
同じように、犬の飼いかたの幸せも少しずつ、変化というか、
 
いや、守備範囲の広がりのようなものが出てきたのでしょうね。
 
 
だからこそ、最初のやり取りのときにはこう答えておりました。


「はい、年老いているからこそ、その子でいいんです。」
 
 
 
無論、お別れの時は悲しみに襲われるでしょうが、それよりも大きな何かを私はきっと得ていると思います。
 
(でも、奥さんはペットロスになるかも…)




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