39
タコメーター
時は20××年。
政府は大きな問題を抱え頭を悩ませていた。
その問題とは…
いきなり切れて犯罪に走るものが多くなって来たことである。
なにぶん、今まで普通にしていた人間が急に切れてしまうわけなので、
気づいた時にはもう遅い!
以前からそういう傾向はあったものの、
このごろ特にひどくなり、何らかの対策を求める声が多かった。
そこで、あるものがこういう提案をした。
「どうでしょ?みんなにタコメーターを取り付けてみては?」
「タコメーター?」?(・∀・)
タコメーターとは、エンジンの回転数を見るために付けられる計器であって、
それによりエンジン稼動時の状態を知ることができる。
通常はそのメーターを見て、エンジンの回転域を把握し、最適な状態を保つことができるのだ。
ではそれを人間に着けると?
エンジンと同じく、その個人個人の状態を分かりやすい数値で把握できるので、
その針の振れ幅を見ていれば、いつもより気分が低くすぐれないとか、
反対に興奮しすぎていて暴走しかねない状態ということも、事前に察知できる!
つまりこれで、いきなり切れそうな人間で何らかの対応ができるというわけなのだ!
「やあ!これは名案!」ヽ(・∀・)ノ
そういうわけで、いざ国民全員にタコメーターを取り付けてみると面白いことが分かった。
感情の起伏は激しいが、臨界点は割合高いところにある人間。
感情の起伏は緩やかだが、臨界点は意外にも低いところにある人間。
おおむね、人間は大きく2タイプに分類できるのだ!
そして、タコメータが本来ついているエンジンにちなんで、前者を2ストタイプ、後者を4ストタイプと呼ぶことになった。
そして、それぞれのおおよその臨界点の位置辺りをレッドゾーンと呼び、お互いがその位置に注意を払うことで、
いきなりのトラブルを避けることができるようになった。
ちなみに本当のエンジンの場合、2ストは小さくて軽量でパワーの出方はピーキーですが白煙がよく出ます。
4ストの場合は大きくて重くなりますが、パワーの出方はフラットで安定しており、白煙もほとんどでないです。
さて、この結果は実は意外なところでも役立つことになったわけだが、
それはいったいどこかというと…
実はそこは警察でした!
容疑者の取調べは、今までは相手の様子を伺いながらのため熟練が必要でしたが、
このタコメーターが導入されて以来、相手の反応が目に見えて分かるのでずいぶん取調べが楽になったのです。
「おい、次の被疑者は4ストか?2ストか?」
「え〜っと、ああ、2ストですね。」
「それは良かった、感情の起伏の乏しい4ストと違って分かりやすいからな。」
「ではがんばって〜。」
・・・・・・・・・・・・
「おや?もう終わったんですか?さすがですね〜。」
「いやいや、なかなかやっこさん手ごわいわ…」
「あれ?2ストタイプではなかったですか?」
「いや、典型的な2ストタイプだ。」
「じゃあ、すぐに相手の反応が分かるでしょ?」
「いや、それ以前に…」
「?」
「2ストだけあって、何を問い詰めてもすぐに煙に巻きやがる!」
【完】
次へ
戻る
とっぷへ