モトコンポに花束を…

6がつ1にち
 ひすあきさんがふるいエンジンをもってかえってきた。
 どうするんだろう?
 ん?なにかいってる。
「ほら、新しい心臓だよ、これを綺麗にしてお前に積んであげるからな。」
 しんぞうってなんだろう?ぼくはそうなるんだろう?


6がつ12に
 いままで、がれえじにいたていう「もとこんぽ」さんがやってきた。
 ひすあきさんがゆうにわ、ぼくがうごかないあいだこのこにのるそうだ。
 このこにも、ひすあきさんわ「しんぞういしょく」お、したそうだ。
 こんにちは、なかよくしてくださいね。


6がつ15にち
 もとこんぽくんとぼくわ、はなしができない。
 もとこんぽさんわなにかおしえてくれるけど、ぼくわわからない。
 ひすあきさんのはなしでわ、
「つうすとろおく」「ふぉおすとろおく」ではことばがちがうんだそうだ。
 もとこんぽさんわ、まいにちげんきにはしっている。
 きびきびうごき、かっこいい、ぼくもああなりたいなあ。


6がつ20にち
 もとこんぽさんが、はなすことばがわかりました。
 すごい!あのひとわぼくのために「ふぉおすとご」おおぼえてくれました。
 かしこくて、かっこいいなあ。


7がつ1に
 ぼくはひさしぶりにおでかけおした。
 
「ごーや」てゆう、おうちでとまったら、そのままおいていかれた。
 ここで、
「しんぞうしじつ」おするとゆう。
 「しんぞうしじつ」ってなんだろう?



8月3にち
 ずいぶんながくねていたみたい、ひさしぶりに目をさますと、なんだかすっきりしている。
 しんぞうしゅじゅつもうまくいったようだ。
 午後からひすあきさんがむかえにきてくれた。


8月7日
 こないだの手術は、ぼああっぷ、くらっち強化、おいるらいんの増大といっていた。
 なんだか、頭がすっきりしてとてもちょうしがいい。


8月12日
 いっしょにすんでいるモトコンポ君もとても調子がよさそうだ。
 前とは別物のように
「のうりょく」があがったとみたいだ。
 ぼくも、だんだん「のうりょく」があがってきているきがする。
 
8月20
 久しぶりに友達のCB君と会う、彼はこう言っていた。
 
「ノーマルが一番いいよ、いじられると無茶されて壊される。」
 どうも、こないだの
「心臓移植」のことらしい。
 きっとボクが能力アップしているから悔しいんだろう。


9月3日
 今思うと以前の私はなんて愚鈍だったんだ?
 たった50km/h程度の最高速、
小さな気化器、ちゃちなクラッチなんかで満足して。
 街を行く他のモンキーたちを見るにつけ彼らが愚かしく見えてくる。
 そういえば、最近モトコンポのようすが少し変だ。
 まあ彼の場合は2ストローク、
機械の完成度からして私の4ストロークに劣るのだから仕方がないか。


9月17日
 旧知の
CBR&Pと会う、どうも彼らはいけない。
 一言で言うならば
「鈍重」
まあ彼らには責任がないことは理解しているが…。
 そんな私の気持ちが態度に出るのか、
彼らは
「モンキーさんあなたは変わっちゃたよ。」と言っていた。
 自分の能力不足を差し置いて無礼なものたちだ。
 今後はもうワンランク上の者たちと走ろうと思う。
 
 今日もモトコンポは不調そうだ、中型と一緒に走ったらしい。
 最近は2スト言語が理解できるようになってきた。
 2ストロークでは無理だよと思ったが口にはしなかった。


10月1日
 モトコンポの様子が変だ、どうもシリンダーにキズが入ったようだ。
 いわゆる
「抱きつき」という症状か…
 周りのものは口をそろえて、
「エンジン乗せ変えが原因だ、君もああなるぞ。」と言う。
 なにを馬鹿げたことを、2ストと4ストの区別も知らない者たちが。
 さあ、来週はツーリングだ。


10月8日
 今日は暗峠に行った。
 やはり私は素晴らしかった。
なんせあの急勾配を先頭をきって駆け上ったのだから。
 一緒に行った者たちの驚き顔のなんと愉快なことか!
 ただ、少し調子に乗りすぎたのか、腰上辺りが少し重い。
 まあ一晩寝たら直るだろう。
 
 モトコンポは無理をして、とうとうシリンダー内を破損したようだ。
 彼は変速ギアを持たない旧式だからダメージも深刻そうだ。


10月22日
 六甲山へ行くはずだったが、どうも頭がスッキリしない、
変わりにドリラが出て行った。
 留守番の間モトコンポと話をした。
しかし、彼は頭もダメージを受けたのか(それとも歳のためか)
 言葉につまったり、単語を間違ったりしていた。
 どうも
「壊れる」「怖い」と言っていたようだ。


10月29日
 ドリラばかりに良い格好はさせれないので、農道を走った。
 さすがに農道は距離があるので、少々骨がおれた。
 モトコンポはいよいよだめかも知れない、
最近わ意味のわからない事お言っている。
 
11月12日
 モトコンポが逝った。
 最後に何かお言いたげだったけど、良く分からなかった。
 その姿お見たとき、急に不安になった。
 でもぼくわ違うんだと思う、ぼくわ4ストだから…
 
 でも、

でも最近、

思ったことが上手くいえなかったり、
言いたいことお忘れ てたりします。


11月25火
 なんだか引っかかる、走ってっても引っかかる。
 オイルの番手があってないんだろうな。
 あれ?最後はいつオイル変えたっけ??
 
…思い出せない。


12がつ3ひ
 動けなくなったぼくのとこにCBくんとR&Pくんがきてくれた。
 
「角が取れて丸くなったよ、この方が君らしいよ。」といってくれた。
 うれしかった、ぼくもそう思います。
 最近モトコンポさんの夢お見ます。
 あの最後のすがたの夢です。
 なんとなく、なにお言いたかったのか今は分かる気がします。
 でもことばでは出てきません。


12ひ
 もう、あまりわかりません。
 でもいいたいことがあります。
 ぼくはもうずぐとまりますのです。
 とまったらもとこさんのよこがいいです。
 
もとこさんはお花がすきだからおはなお、おいてあげたいです。


13
 ぼくわまだうごきます、
 まえのしんぞうがある、ゆうてます、うごくます。


2がつ3にち
 なんだかずいぶんねてました。
 ぼくわはやかったのに、またゆっくりです。
 いまはゆっくりのほうがいいです。
 ゆっくりうごいて、もとこんぽさんにあいにいきます。
 
もとこんぽさんにお花おあげにいきます。


おしまい

解説

今更言うまでもなく、「アルジャーノンに花束を…」のパロディです。
しかし、あの小説は傑作です!
私は何度読んでも泣いてしまいます。
(実は、これを書きながらも、後半で感極まりかけました!)
未読の方は是非!
いつぞやのテレビドラマとは全く別物!
ラブストーリーなどではありません。
「幸せとはなにか?」
本当に深く考えてしまう作品です。
(分類はSFになるんでしょうが、私は純文学でもいいと思います!)

話は変わりますが…
SFでは、もう一つおすすめの作品があります。
「夏への扉」(ロバート・A・ハインライン (著)
これぞSF!!
伏線の効いたストーリー!
たたみかけるようなスピード感!
あっという結末!
そして…
夏の日のそよ風のような爽やかな読後感!

読みなさい!

絶対損はしない!
(≧ω≦)b「ま〜ちがいない!」


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