銭湯ミーティング 20


天明湯 (大阪市 阿倍野区)


うちの近所に、近畿在住の銭湯マニアの間で
「幻の銭湯」と噂される評判の銭湯があります。

実はそう呼ばれるにはちゃんとした訳がありまして…



なんとこの営業時間の短さ!
(午後4時から7時まで、しかも水・金は休み)

だから、行きたくともタイミングを逃すとなかなか入浴できないのです。

実はかくいう私も、この前を何度も通っていたくせに、
いつも閉っているのでここが銭湯であることにまったく気づいていなかったのです!

で、なぜこうも営業時間が短いのかといいますと、
実はここは以前老夫婦で営業されておりましたが、
数年前にご主人が身体を壊し店に出れなくなり、それを機に廃業を考えたところ、
常連さんたちのたっての要望で、奥さんが一人で続けることを決意!
以来、そのおばあちゃんが一人で全てを切り盛りしてはるの、どうしても時間的にこうなったとか。

たしかに、銭湯の営業は、お湯の段取り、清掃などなど、多岐にわたり、
これが毎日のこととなると、元気な男手でもしんどくて辛い!
そう思うと、本当によく頑張っておられるなと頭の下がる思いです。

さて、では早速おじゃましまして…

あれ?
時刻を過ぎてるのにまだのれんが出ていないな?
ちょっと裏手にまわってみるか。


するとそこでは一生懸命蒔(まき)をくべているおばあちゃんの姿が。

で、声をかけると、

「すみませ〜ん、ちょっと遅れてまして、どうぞ勝手に入っていてください。」


了解了解、ではお邪魔したします。



なんとも懐かしい番台!
最近はカウンター形式が主流になったからこういう光景も珍しくなりつつあります。
年季の入った体重計は単位の表示が漢字で「瓩」(キログラム)。
牛乳ケースの横には、写ってないけど10円玉投入式のマッサージ器が。
子供の頃、この横のハンドル部分をつかんで、よく運転ごっこをしたなぁ。

着替え用の脱衣箱を見ると…





「おおおおおおお〜!」




「おおおおおおお〜!!!!」

見事に並んだ漢数字!
今の子供はこれ読めないでしょうね。
いや、大人でも読めない人多いかも…
(ちなみに、これは左から30、34です)

実はこの表記にも理由があって、この銭湯は創業がなんと大正13年。
以来、大きな改装をすることなく、今日までそのまま営業されておられるのです。
だから、そこかしこが懐かしさ溢れるつくり。



仕切りの棚も同様に♪


そして天井に目をやれば…




すごく美しい格子模様!
そこに懐かしい三枚羽の大きな扇風機がよく映えます。



へ〜、神棚があんなところに…

神様は女湯のぞき放題でええもんやなぁ〜♪
φ(._*)☆\(-_-)



そこかしこのつくりが、素晴らしく、
また、掃除も行き届いているので状態もすごくよく、
こうして眺めているだけでもすごく楽しい♪
こういうところからも、お店の方のセンスの良さと真面目な仕事ぶりがうかがえます。
(こりゃいよいよおばちゃん一人では大変だろうな…)


さて、いくら楽しいとはいえ、いつまでも裸で脱衣所にいては冷え切ってしまう、
そろそろお風呂に入りましょう♪

でもさすがにカメラは持ち込めませんので、お風呂場の画像はなし!
(*^人^*)

浴室は何の飾り気もないシンプルなつくり。
あるのは深さが異なる三つの浴槽に、かけ用の水槽のみ。
サウナはもちろん、電気風呂、ジェット風呂などの類は一切なし!
最近の何でもありのレジャーっぽいお風呂に慣れた方だと、これをみて、
「何もないではないか!」
というかもしれませんね。

でも、そこであえて言わせていただきたい。

「だからこそ、何もないがここにある!」

そう本当にここには、銭湯本来の目的以外のものは何もない。
でも、それこそが素晴らしい。

髪と身体を洗い、蛍光灯一本の薄暗い明かりの下で浴槽に浸かれば
そこにあるのは、心地よいお湯と意外なほどに静かな空間。

なんだろ、この心地よさは?
まるで今いる場所がどこかの山奥か、洞窟の中!
先ほどまでうろついていた街中だなんて本当に信じられない。

そこで視線を奥に向けると、タイルで描かれた富士山と天女のモザイク画。
このセンスがいいね〜。
いや〜、めでたい、めでたい!

今度は視線を近くに落とすと、浴槽の中も丁寧に敷き詰められた緑色のきれいなタイル。
さすがに長い年月頑張ってきているので、ところどころはがれてはいるけれど、
それでも手入は行き届いており、きれいなのはたいしたもんだ!

湯加減は、角の取れたような感じでちょうど良く、私にしては結構長湯を楽しんでいたのですが、
しばらくすると女湯から「熱い」との声が。
するとおばあちゃんがやってきて、「熱くないですか?」とたずねるので、
「いえいえちょうど良いですよ。」と。


そういうわけで、気がつけば結構ゆっくりしまっていた。




「いいお湯でした、また来ます!」ヽ(^∀^)ノ



そうそう、 面白いことに浴槽へ注ぐお湯の口は、よくあるライオンの顔ではなくヒツジ!
なんと、ひつじの口からお湯がザーザーと流れ出てるではないの!
これは初めて見るな〜。
もしかしてお店の方はひつじ年なのかな?
今度行ったら尋ねてみよう!






天明湯 

大阪市阿倍野区文の里3-3-14
Tel : 06-6622-0901
【営業時間】16:30〜19:00
【定休日】水・金





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